大黒屋本舗とおばあちゃん

勉強に疲れたので、散歩がてら家から近い大黒屋本舗とやらに行ってみた。
高島屋にも店舗をもっているそうだが、店に行くのも食すのも初めて。
名物の御鎌餅っていうネーミングも微妙に気になっていた。
店は、寺町鞍馬口を下り、阿弥陀寺前を少し西に入った南側。
昔ながらの店構えが、ちょうど降り始めた雪に映えて風情がある。
前に設けられた小さなショーウィンドウがかわいらしい。
戸を引き、薄暗い中にはいると、土間脇のミセに主人がいて、いらっしゃいませと迎えてくれる。
このような、いくつもの時代を越えてきた雰囲気に接すると猛烈な懐かしさに捕らわれてしまう。
そして、まだ幼かった日々とその頃のすまいとおばあちゃんを思い出す。
今とは確実に異なるアナログな時代。
縁側のまわる陰影礼讃的な家屋。
白黒テレビで、歌舞伎や寅さん、能といった番組をみていたおばあちゃん。
日常としてあの時代が戻ることはないけど、ふとした瞬間にあの時代へ戻らせてくれるスイッチみたいなものが、京都には至るところに隠されている。
大黒屋主人はすごくいい笑顔で、僕に名物の御鎌餅二つと懐中汁粉を二つを手渡してくれた。
お茶を点てて、御鎌餅頂きました。
大黒屋主人のようにやわらかな、そして、やさしい味のお菓子でした。